カタールワールドカップ開催まで、残り2か月を切りました!
各国、親善試合や公式戦でメンバー選考の大詰めを迎えています!
我が国日本は、ドイツに乗り込んでアメリカとエクアドルとの親善試合を行いました。
基本的には、チームとしての戦い方を揃える最後のチャンスという位置づけになりますが、代表当落線上にいる選手にとっては最後のアピールの場になります。
立場によって過ごし方が大きく変わる2試合となりますが、そんな2試合から見えたサプライズや成果、課題を振り返ってみたいと思います!
まずは、今回のドイツ遠征に選ばれたメンバー30人を確認していきましょう!
■GK
1 川島 永嗣 12 権田 修一 23 シュミット ダニエル 30 谷 晃生
■DF
2 山根 視来 3 谷口 彰悟 4 瀬古 歩夢 5 長友 佑都 16 冨安 健洋 19 酒井 宏樹
20 中山 雄太 22 吉田 麻也 28 伊藤 洋輝
■MF
6 遠藤 航 7 柴崎 岳 8 原口 元気 10 南野 拓実 11 久保 建英 13 守田 英正
14 伊藤 純也 15 鎌田 大地 17 田中 碧 18 三苫 薫 21 堂安 律 24 旗手 怜央
■FW
9 古橋 亨悟 25 前田 大然 26 上田 綺世 27 相馬 勇紀 29 町野 修斗
我がフロンターレからは谷口選手と山根選手が選出!
もはや常連組ですし、何事もなければ本番もメンバー入りが濃厚だと思います。
そして、旗手選手が今回選出されましたね。
これで、フロンターレ出身での代表選出(通称[フロ上り]と言うとか言わないとか)は7人!
【フロンターレから世界へ】とキャッチコピーがつけられるくらい一つの快挙ですよね!
板倉選手が怪我でなければ合計8人になるね!
(間違えていたら教えてください…。)
このメンバーにプラスして、大迫選手、板垣選手がコンディション不良で選出されませんでした。
まだワールドカップまでの期間は残っているので、コンディションを整えて頂き、活躍をしましょう!
それでは、今回の親善試合を振り返っていきたいと思います!!
この試合で驚かされたのは、4-3-3のシステムから4-2-3-1へシステムを変更したことです!
ここまでのアジアでの戦いでは、親善試合も含めて4-3-3をベースに戦ってきた森保ジャパンですが、ここにきてシステムを変更してきましたね。
そんなスターティングメンバーがこちら!
人選に大きな変化は無いものの、このシステムを採用してきたことに非常に驚きました。
人選では、前線でプレスに走り回れる前田選手。
南野選手に変わり左に久保選手。
田中碧選手に変わりトップ下に鎌田選手が入りました。
特に絶対的だと思われていた中盤のトリオが解消されたのは意外でしたね。
基本的に主導権を握って試合を行えるアジアの戦いから、主導権を握られる世界との戦いを見据えた人選となったでしょうか。
そして今回の親善試合は、ヨーロッパナイズされたアメリカに対し、守備的な布陣で臨み、意図した采配が上手くいったような印象。
仮想ドイツ、スペインというイメージで準備したというところですかね。
では、試合内容はどのような変化があったでしょうか!
連動したプレッシング
4-2-3-1が基本の初期配置ですが、守備の時には鎌田選手をトップに置いた4-4-2のシステムに可変していました。
この攻守でシステムが変わるやり方も、森保ジャパン始まって初めてかもしれません。
少なくとも、私の記憶にはございません…。
ヨーロッパで戦術的な思考やフィジカルを鍛え抜かれた選手たちの連動したプレッシングがとても印象的でした。
前田選手と鎌田選手は横に並び、相手のボランチ(この日は4番のアダムス選手)にパスが出ないような立ち位置を取っていましたね。
一般的に、中央ボランチにパスが入ると、そこから前線へ攻撃のスピードが一気に上がるため、ここへのパスコースは切っておきたいところです。
2人でこの規制を掛けるのがまずはベースポジションです。
そして、相手CBがボールを保持しているところに前田選手がプレッシングを行うのですが、上図のように相手ボランチのパスコースを消しながらプレッシングを行っていたのが特徴的でした。
もし、前田選手が元のポジションから真っ直ぐプレスにいった場合、CBからボランチへのパスコースを空けてしまうので、簡単に中央をパスで突破されてしまいます。
前田選手がこのようにプレスを行うと、CBのパスコースは横のCBかサイドバックに絞られます。
ここを鎌田選手がCBに、久保選手がサイドバックに寄せていくことで、連動したプレッシングを成立させることが出来ます。
この日のアメリカは、挑戦的に前の中盤、8番マケニー選手や14番デ・ラ・トーレ選手にパスを付けてきました。
しかし、久保選手の読み、遠藤選手・守田選手の連動によりことごとくパスカットに成功!
前半の12分は久保選手、31分には逆サイドで遠藤選手がそれぞれ読みを利かせてボールを奪取。
ショートカウンターによって決定機を演出しました。
強豪ドイツ、スペインにも、前線の連動した守備からの鋭いカウンターというのは大きな武器になります。
カウンターの大きな利点は、相手が守備の準備をしていないうちに攻め切ることが出来ることです。
アメリカ戦の先制ゴールはまさにショートカウンターでした。
相手のパスミスを伊藤純也選手がカウンターに持ち込み、鎌田選手のゴールが生まれたので、ワールドカップ本線でも威力を発揮しそうです!
森保監督がよく言っている「良い守備から良い攻撃」をまさに具現化したような展開だね!
しかし、同時に課題も見つかりました…。
エクアドル戦で詳しく振り返りますが、後半アメリカは3バックの形で攻撃を組み立て始めました。
これに日本は対応することが出来ず、後半はアメリカにボールを握られる展開となってしまったのです。
最後のシュートシーンでの質がアメリカは低かったので助かりましたが、ワールドカップ本戦の強豪は見逃してはくれないでしょう…。
試合を締める3バック
4-2-3-1と4-4-2の2つのシステムを使いわけて戦った森保ジャパン。
試合終盤にもう一つの戦術、システムを試しました。
5-4-1の守備固めの戦術です。
国の威信を懸けたワールドカップですから、何が何でも勝利を目指してどの国も戦ってきます。
特に試合終盤は、得点の取れるFWをどんどん投入してくることは想像できるでしょう。
その時に、5バックを敷き確実に守れるような準備を森保監督は試しました。
実際に2点リードしていたからこそ、この準備をしておくことは非常に重要です。
フロンターレの前節柏戦、パワープレイを準備していなかったがためにぶっつけ本番で行った結果、ちぐはぐだったというのは記憶に新しいはずです。
ドイツのカイ・ハヴァーツ選手、スペインのボルハ・イグレシアス選手など、屈強なFWのパワープレイに耐えられるように、連携を試すことが出来たのは大きな収穫かな!
アメリカが3バックのビルドアップに変更してからは少し課題が残ったものの、前半の攻守のかたち、試合終盤の5バックと成果の多いアメリカ戦となりました!
そして、中3日で迎えたエクアドル戦!
こちらはアメリカよりも技術レベル・フィジカルレベルが一段階上がり、本番を想定したシュミレーションが行いやすい試合であった印象を受けました。
そんな試合のスタメンはこちら!
試合前に「メンバー総入れ替え」を明言していた森保監督。
その言葉通り、スタメンは全員変更しメンバー選考へ気合の入ったプレイが多く観られました。
しかしその一方で、チームとしての戦い方、統一感というのはアメリカ戦程は感じられず、本戦への生き残りを懸けたサバイバルの色合いの方が濃く出てしまいました。
個人としてのアピールはもちろん重要ですが、サブメンバーであってもチームとして与えられた戦術・役割をどうこなしていくかというのは、短期決戦を戦うチームとしては重要になります。
ターンオーバーでメンバー変更したら、チームの質がかなり落ちてしまっては意味がありません。
そういった意味では、少し寂しい試合になってしまったかな…。
不完全な3バック対応
それをどうして感じてしまったかというと、エクアドルが3バックでのビルドアップを行ったのに対しての対策が施されなかったからです。
これはアメリカ戦でも少し触れたところです。
4-4-2でプレスに向かうも、3バックでボールを持たれることで、2トップと3バックで人数を多く設定されてしまい、ストレスなくボールを保持されてしまいました。
アメリカ戦のプレスは、2CBに対して2トップが当てはまるので、相手DF同士でのパス交換が不自由になってしまいます。
そこで、アメリカは途中から3バックに変更することでこの不自由さを解消しました。
エクアドルも3バックにしてパスの選択肢を増やしたことで、日本FWがプレッシングに向かっても、簡単にかわしてしまっていました。
【数的同数】から【数的優位】にもっていくことで、パス回しを楽に行っていましたね。
この時の判断として、【前からのプレッシングで抑えにいく】のか【引いて攻撃を受け止めるのか】を選択しはっきりさせた守備を行う必要があります。
9月24日に行われたヨーロッパネーションズリーグA3第5節、イタリア対イングランドの試合は、まさに3バック同士での戦いが繰り広げられていました。
マンチーニ監督体制で初めて3バックで臨んだイタリアに対して、イングランドは【引いて攻撃を受け止める】守備を行いました。
イタリアの3バックには自由にボールを回させていますが、中央のパスコースは塞ぎサイドに誘導し、サイドに出たパスを潰しに行くという守備で対応。
対して、ダイヤー選手を中央に置いた3バックのイングランドに対して、イタリアは【前からのプレッシングで抑えにいく】守備で対抗。
ただプレッシングに行くのではなく、サイドに追い込んでいくようなプレッシングを行い、サイドで密集を作ったところでボールを奪う戦術を取りました。
同じ3バックを使いながら戦い方が異なるこの試合ですが、観ていない方はぜひ観てみてください!
この攻防は見応え充分なので、とても面白いですよ!!
こういった戦術は、日本の4-4-2のシステムに単純に落とし込むことは難しいかもしれませんが、現状の中途半端なプレッシングを行っているとドイツ、スペインは逃さず攻撃をしてきてしまうので要注意です。
むしろ、この2試合で「変化を加えた時の対応力がない」というスカウティングをされてしまう可能性も出てきてしまいます…。
3バック対策は早急に手を打っておく必要がありそうです。
アピール成功者は誰だ
3バック対策に限らず、チームとしての戦い方は少しちぐはぐになってしまったエクアドル戦。
だからこそ、途中出場した遠藤選手と鎌田選手の存在感が際立った結果となりました。
それまで攻撃でチャンスをなかなか作ることが出来なかった日本でしたが、鎌田選手が低い位置に降りてくることでのカウンターをいくつか成立させていました。
上図は77分のシーン。
日本代表が押し込まれるも、鎌田選手が良い位置に降りてきてボールを回収。
相手選手にタックルを受けてしまいますが、サイドの田中碧選手に繋ぎカウンターが成立しています。
65分の交代でピッチに立ってからは、攻守五分五分で試合を展開し、決定機も作ることが出来ていましたね。
ドイツでレギュラーで戦っているだけあり、立ち位置一つとっても賢いプレイヤーであることが分かります。
ヨーロッパリーグ優勝の鎌田選手とブンデスリーガのドゥエル王遠藤選手の実力はやはり別格なんだね!
この二人はメンバー入り、レギュラーはほぼ間違いないという選手なのでアピールする側の立場ではないかもしれませんね。
では、この試合でアピールに成功した選手は誰でしょうか!
■シュミット ダニエル選手
まずはゴールキーパー、シュミット ダニエル選手です!
前半終了間際のコーナーキックやPKストップなど好セーブを連発!
身長を活かした高いボールの競り合いも安定感がありましたね。
2010年の南アフリカワールドカップ前に、川島永嗣選手がイングランドとの親善試合で好セーブを見せてレギュラーの座を奪ったシチュエーションにも似ている気がします。
権田選手が負傷で離脱してしまったので、ひょっとすると、このままレギュラーまで一直線なんてことも考えられます!
足元の技術も安定しているし、とても現代的なGKだね!
冨安選手を含めたビルドアップにバリエーションがでるかも!?
■上田 綺世選手
もう一人上げるとすれば、上田 綺世選手ではないでしょうか!
前半、古橋選手が前線を務めるもボールが収まらず攻撃が停滞していたと思います。
しかし後半、上田選手は体を張り、前線でいくつかボールを収めてチャンスを演出!
停滞していた日本の攻撃に、最初の息吹を吹き込んだプレイヤーです。
今回帯同できなかった大迫選手の後任として、メンバー入りにアピールできたうちの一人ではないでしょうか!
いきなりレギュラーまでとはいかないかもしれませんが、鎌田選手との連携も悪くなかったので、本戦での出場、活躍が楽しみな選手になりました!
以上、親善試合2試合を振り返ってみての成果と課題を取り上げてみました。
準備していたものが上手くいっている時は、とても良い連携で相手を崩すことが出来ることはアメリカ戦で証明されました。
しかし、それが崩れた時の対応力、プランBをしっかりと準備していくことが本戦に向けての課題になりそうです。
また、今回新しいシステムを敵国ドイツにてお披露目をしたわけですが、今までやっていないパターンを見せたので、当然スカウティングの対象になります。
先述した3バックの対応を含めて、対戦国は対策を考えるはずです。
手の内を一つ明かした森保ジャパンですが、残る隠し球はもう使い果たしてしまったのだろうか?
全てを対策された後に、残った手立てはないのでしょうか?
一つ、手の内を何も見せていないものがあります。
それは、コーナーキックを含めたセットプレイです。
この2試合も、単純なセンタリングを上げて単純に跳ね返されるというのを繰り返しました。
全部跳ね消されていたので、何か工夫してチャンスを作りたいのが当然の心理です。
しかし、デザインされたセットプレイは一切見せませんでした。
これは、ワールドカップ初戦のドイツ戦をすでに見据えている可能性があります。
ドイツ戦で最初に獲得したセットプレイで1点を取って逃げ切りたいという狙いが、すでに森保監督の頭の中にあるということなのかもしれません。
我々の知らないところで、すでにワールドカップは始まっているのかもしれません…。
セットプレイのデザイン、そして攻撃のパターンがもう一つ入ってくると、対策を練ってくる敵国の裏を返す可能性が出てきます。
世界的に見れば、このグループで日本が勝ちあがるのは番狂わせです。
そんな気持ち良い展開をイメージしながら、観る側も本戦に備えたいと思います!
それでは、週末にはJリーグが再開しますので、そちらでまたお会いしましょう!!
Vamos!
SAMURAI BLUE!!