【J1】第34節 vsFC東京 最終節勝利も優勝逃す ~多摩川クラシコレビュー&シーズン総括~(2022/11/5)

2022シーズン、三連覇を懸けたフロンターレの長い旅路が終わりを迎えました。

諦めかけた優勝への可能性を、選手たちは諦めることなく最終節まで希望を持たせてくれました。

まずは、最終節まで優勝争いをした選手、スタッフの皆さんに労いの言葉を贈りたいと思います。

 

一年間、本当にお疲れさまでした。

 

結果は、10人での戦いを強いられながらもフロンターレがFC東京に勝利しました。

しかし、横浜F・マリノスも神戸に勝利したため、シャーレはマリノスの手に渡りました。

 

シーズン最終節優勝争い多摩川クラシコ

色々な設定が乗っかった今節でしたが、チョン・ソンリョン選手の一発レッドカードにより前半28分から10人での戦いを余儀なくされました。

FC東京に支配される時間が長かったものの、車屋選手のセンタリングからのオウンゴールで勝利をもぎ取りました。

 

今回は、フロンターレが10人になってからの戦いを振り返るとともに、シーズンの総括をしていきたいと思います!

2022シーズン最後になりますので、よろしくお付き合いください!

 

 

【レビュー】10人で勝ち取った執念の勝利

 

まずは、最終節のスタメンを確認していきます!

 

最終節、多摩川クラシコ。フロンターレは怪我人がほぼ戻ってこれました!

 

フロンターレは、怪我人がほぼ戻ってこれましたね。

レアンドロ・ダミアン選手がベンチから外れましたが、大島選手がベンチに入り途中出場するなど、ほぼ全選手がプレイできる状態で試合を迎えられたのは今シーズン初めてではないでしょうか?

シーズン途中から見出せた中盤3人のコンビに、安定したDF陣、前線はいつもの3人と、万全な布陣で臨みます。

 

一方のFC東京。

今シーズン頭角を現した左サイドバックのバングーナガンデ選手が出場停止のため、サイドバックに中村選手が入っていますが、こちらもほぼベストメンバー。

前線のL.フェリッペ選手、アダイウトン選手、渡邊選手の3人は破壊力抜群のため、要注意です。

 

 

試合序盤は、前からプレスをかけてボールを支配していたフロンターレが優勢を保っていました

敵陣でボールを回収し、ショートカウンターを打つなど、何度もゴールに迫り、前半18分に脇坂選手のゴールで幸先よく先制します。

 

FC東京はフロンターレのプレッシングを何度かかわしますが、基本的には強いプレッシングに苦しめられます…。

短いパス回しがうまくいかないと見た時には、両ウィングのアダイウトン選手、渡邊選手を走らせて、フロンターレのDFライン裏を狙っていました。

この中長距離のパスがジャブのように効いていき、前半28分に裏に抜けるアダイウトン選手へのパスがきっかけとなり、チョン・ソンリョン選手がDOGSOで一発退場。

 

こういう大きな出来事が起きてしまうのがダービーであり、多摩川クラシコです。

 

以降、攻めるFC東京守るフロンターレというはっきりとした構図が出来上がりました。

早い時間から10人での戦いを余儀なくされ、前半はFC東京優勢で進みました。

しかし、90分での結果は3-2でフロンターレの勝利!

後半途中はFC東京が攻めあぐねている場面もありました。

 

11人対10人になってから、どのような展開になっていったのか。

ここを中心に振り返ってみましょう!

 

 

中間のスペースを取られた守備

 

まず、10人になってからの前半の残り時間は、実は大きなピンチをあまり作られていません。 

フロンターレが苦しんだのは後半です。

 

前半は、マルシーニョ選手がDFラインに吸い込まれるような5バックの形になり、スペースがうまく消えていました。

 

応急処置的に、マルシーニョ選手を入れた5バックで対応

 

前半42分以降、FC東京に自陣でボールを握られる展開になりました。

左サイドにいる松木選手、長友選手、アダイウトン選手を中心に攻撃を行おうとしていましたが、右サイドの中村選手や渡邊選手が幅を取り続けていたのがかなり気になりました。

フロンターレは、ここにマルシーニョ選手をカバーにつかせたので、実質5バックのような陣形になったのです。

 

中盤の東選手や塚川選手への循環はシミッチ選手、脇坂選手がスライドして対応していたので、FC東京にとってゴール前にはあまりスペースがありませんでした。

41分に木本選手から渡邊選手に楔のパスが通った以外は、基本的には外回り循環でパスが回っていたので、特別危ないシーンはありませんでしたね。

 

 

後半の陣形

 

何とか前半を無失点でしのぎ、後半は車屋選手を左サイドバックに、橘田選手を中盤に挙げた4-4-1の陣形に変更。

この変更が、失点につながるピンチを招いてしまいました…。

 

陣形を変更したことで、選手間のスペースにFC東京が侵入しやすくなった

 

少しわかりづらい図になってしまいましたが…。

フロンターレは4-4-1のブロックを敷くも、DFと中盤の中間にスペースを与え、(黒で塗られていないスペース)楔のパスを入れやすくしてしまったのです。

 

FC東京は、赤線で引っ張ったようなV字W字を作る配置を取るのがうまいです

単純な縦パスよりは、斜めのパスをうまく組み合わせて前進し、チャンスを作ります。

フロンターレが4-4-1と綺麗な配置にしたことで、FC東京にV字やW字を作りやすい環境を整えてしまったのです。

 

フロンターレの選手たちも、FC東京の選手に中間ポジションを取られてしまうと、誰のマークなのかが曖昧になってしまうので、強いプレッシャーを掛けられない状況になってしまいました。

 

後半開始早々:失点のコーナーキックにつながったFC東京の連動性

 

後半開始早々のFC東京の攻撃です。

フロンターレはきっちりと4-4-1のブロックを作って待ち構えています。

FC東京はアダイウトン選手がボールを持ったところから攻撃が始まります。

 

まず、中盤の4枚の間に立つように渡邊選手松木選手長友選手が立っています。

そして、大外に中村選手アダイウトン選手でフロンターレの選手たちの中間を全員で取ることができています。

 

そして、初めに動き出したのが松木選手です。

中央から山根選手の裏を狙うランニングを仕掛けます。

この動きに対してパスは出ず、フロンターレ陣も一呼吸置くタイミングです。

その動いたスペースに入ってきたのが渡邊選手

ちょうどセンターバックも出づらい、ボランチの視野にも入っていない場所でボールをもらいます。

 

その動きに連動したのが長友選手。

中間のレーンを走ることで、マークの付きづらい状態を保っています。

ジェジエウ選手の身体能力でクリアすることはできていましたが、そのクリアボールをサイドに流れていた松木選手につながれて、コーナーキックを与えてしまう流れとなりました。

 

 

10人の戦いになったので、DFに避ける人数を8人に増やすことは合理的で正しい選択に見えます。

しかし、相手の嗜好するサッカー、相性、組み合わせによってはそれが必ずしも正解にはなりません。

 

守備の枚数を増やした4-4-1の陣形を行っていた58分までは、ほとんどがFC東京優勢で試合が進んでいきました。

 

 

【選手交代】中盤3人でカバー

 

そして58分、勝負師鬼木達が動きます。

 

知念選手と大島選手を投入し、反撃体制を整えました。

マルシーニョ選手と知念選手を前線に置き、大島選手、橘田選手、家長選手を中盤に置いた4-3-2の陣形で勝負に出ます。

 

攻撃的な交代で勝ち越しを狙ったと思いますが、この交代は守備にも良い影響を与えました!

4-4-1よりも4-3-2の陣形のほうが、中央に人を多く集められ、FC東京の縦パスを封じることにつながったのです。

 

中盤3人で中央を締め、ウィングはサイドバックがケアをする

 

まず、前線が2人になったことで、FC東京のビルドアップの開始時点、東選手、木本選手、森重選手にプレッシャーを掛けることができます。

右サイドに追い込みたいのか、左サイドに追い込みたいのかでプレスの方向を2人で示せば、後ろも連動することができます。

 

中盤の3人は、前の2人の動きに合わせて連動すればスペースを埋められます。

ウィング(アダイウトン選手・渡邊選手・中村選手)にパスが出れば、サイドバック(山根選手・車屋選手)がプレッシャーに出る。

空いたスペースはセンターバックか中盤でカバーするので、中盤の枚数が減ったからと言って不足が出ることはありません。

 

61分のマルシーニョ選手のゴールも、橘田選手が前からプレスを掛けたのがきっかけです。

アンカーの位置にいた塚川選手には大島選手がついていたので、森重選手もパスの出し所を完全に失っていました。

結果、苦し紛れに保持したところを橘田選手が奪い取り、勝ち越しゴールになりました。

フロンターレの陣形の変更により、FC東京の斜めのパス(V字やW字)が通らない立ち位置に自然となっていたのです。

 

勝ち越しした後、少し4-4-1に近い陣形で守りに行きましたが、73分に同点に追いつかれてしまうなどFC東京の時間帯が何分かありましたね。

しかし、山村選手を入れて5-3-1にしたことで再びフロンターレ優勢に変わりました。

 

人数が少ないから不利後ろの枚数を増やしたから守りやすい

これらは正しいかもしれませんが、試合においては今節のように正解にならない場合があります。

相手の特徴、戦い方からベストな陣形を探って配置することで、特別な戦術を用いらなくても有利に進めることができるのです。

 

最終節に勝負師、名将の真骨頂が出た。

そんな多摩川クラシコになったのではないでしょうか。

 

 

【シーズン総括】怪我人に苦しんだ一年間

 

というわけで、2022シーズンは2位という成績で幕を閉じました。

惜しくも3連覇は逃しましたが、1年間立派な戦いを見せてくれました。

 

今シーズン、とにかく怪我人が多かった…。

特にACLが重なっていた時期は、一人復帰したらまた一人怪我をしてというループに陥っていました。

また、コロナウイルスの猛威も受けたため、フルシーズンで全員がそろったのは最終節くらいだったのではないでしょうか。

 

そのくらい人が揃わなかった。

海外へ移籍してしまった選手の穴を埋めきれなかったことも含めて、今シーズンは人を揃えきれなかったシーズンといえるでしょう。

 

そんな一年を私なりに振り返っていきたいと思います!

 

 

【ポイント①】ジョアン・シミッチ

 

ACLの明けた5月、チームはギリギリの状態でした。

国内絶対王者として迎えたACLの舞台で、まさかのグループリーグ敗退。

タレントは抜けてしまっていたとはいえ、グループステージは突破したかったところでした。

 

そんなメンタルもボロボロ、移動でフィジカルもボロボロの状態で国内に帰ってきてJリーグが再開。

国内に戻ると、清水エスパルス、アビスパ福岡、ヴィッセル神戸と幸先よく3連勝し、一時は首位に躍り出ました。

 

やはり国内では戦える!三連覇をするしかない!

 

と思っていたのも束の間、鳥栖に引き分けた後、湘南に大敗、京都にも負けを喫する苦しい状況に一転しました。

5,6月で取れた勝ち点はわずかに【5】

この時期は怪我人、コロナが重なり、ベンチメンバーも満足に揃えられないような状態になっていました。

 

時を同じくして、マリノスが勝ち点を伸ばし始めました。

16節のところで首位を明け渡し、そのまま連勝街道まっしぐら!

 

直接対決を控えているところで、マリノスに置いて行かれるのか……もう優勝の可能性が消えてしまうのか…。

こう考えてしまったサポーターも少なからずいたのではないでしょうか。

 

そんなチーム状況でスタメンに帰ってきたのがジョアン・シミッチ選手でした!

7月30日の23節、浦和レッズ戦にスタメン出場。

この試合は、コロナ感染者がピークの時で、ベンチにゴールキーパーが3人、フィールドプレイヤー2人と超非常事態での試合でした…。

結果はレッズに完敗でしたが、中盤で気を吐いて走り回るシミッチ選手のプレイは周りに良い影響を与えていました。

さらに、シミッチ選手がいなければもう少し失点していてもおかしくなかったです…。

 

23節以降、25節の京都サンガ戦で累積警告での出場停止以外、全試合にスタメンで出場!

橘田選手と脇坂選手で作られた中盤のトリデンデは、とても良いコンビネーションでフロンターレの攻守に安定感をもたらしてくれましたね。

シーズン中盤以降に、シミッチ選手がアンカーのポジションに鎮座し、ジェジエウ選手が復帰してのブラジリアンコンビもかなり強力でした。

 

この復帰、定着がなければ2019年シーズンのように7月末から引き分け、負けを繰り返してACL出場権までも逃していたかもしれませんね…。

 

他にも、ジェジエウ選手が復帰し守備力が上がったこと、マリノス戦で劇的ゴールで勝利したこと、マルシーニョ選手が覚醒しシーズン12ゴールを取ったことも、シーズン2位で終えた原動力です。

今年はブラジリアントリオに助けられたなぁ…。

 

来年の去就が気になりますが、兎にも角にも今シーズンもありがとう!

Muito Obrigado!!

【ポイント②】9月アウェイ三連戦

 

8月、マリノスとの直接対決を制したフロンターレはそこから4連勝!

マリノスは8月は1勝もできないという不調のど真ん中に。

 

勝ち点差もつまりはじめ、いよいよ逆転優勝が現実味を帯びてきた秋。

首位で並んで迎えた9月。

さあここから!という湘南ベルマーレとの神奈川ダービーで敗戦を喫してしまいます。

湘南にはシーズンダブル、しかも、勢いに乗りたい5月と9月にそれぞれ対戦し敗北…。

内容も結果も完敗の2試合になってしまったのが余計悔しい…。

 

この敗戦がきっかけとなってしまったのか、次節のサンフレッチェ広島に勝利するも、名古屋グランパス、柏レイソルに引き分け。

9月に取れた勝ち点はこれまた【5】

 

そこに追い打ちをかけるように、コンサドーレ札幌とのアウェイは聖地厚別での試合。

強烈な打ち合いのゲームを展開するも、鼻差で札幌に軍配。

名古屋、柏、札幌のアウェイ3連戦で【勝ち点3】を取り切れなかったのは非常に痛かったですね。

 

最後は破竹の4連勝で意地を見せてくれました。

しかし、結局ここで引き離された勝ち点を巻き返すことはできませんでした。

 

あそこで守り切っていたら……。

あの時決め切っていたら……。

たらればは尽きませんが、言っていても仕方ありません。これが1シーズン戦った結果です。

 

勝ち点差2で優勝を明け渡したと考えると、このアウェイ3連戦で1勝2分以上で終われていたら…。

 

 

ご愛読に感謝。そして2023シーズンへ…。

 

主力を多く引き抜かれてしまった状況で、最後の最後まで優勝争いをした選手・スタッフに改めて盛大な拍手を贈りたいと思います。

厳しい一年でした、しかしよく戦い抜いた。

今シーズンのオフも、何人か引き抜きがあるかもしれません。

しかし、今年の悔しさを知るベテランや若手が来年以降に想いを紡いでくれます。

キーパー・ストライカーのポジションは、現実的に後継者を探し始めなければならない時期かもしれません。

どんなスカッドであっても、目指すは王座奪還のみです。

 

 

そして、4月から始めた当ブログですが、1シーズンご愛読いただきましてありがとうございました。

分析力、文章力、知識等々、まだまだ未熟なところが多い中、読み続けてくださった読者の方々には感謝しかありません。

 

来シーズンはもっと内容を濃く、皆さんに読みやすく、面白いと思っていただけるようなコンテンツにしていきます。

引き続き、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

 

ワールドカップの内容を少し書き、コラムが書けたらいいな…。

とざっくり思っていますが、基本的には来シーズンまではお休みする予定です!

海外サッカーやいろいろなインタビュー、本を通じて勉強の冬にしたいと思います!

 

それでは、また来年お会いしましょう!

See You Next Time!

 

Vmamos!Frontale!!

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