満身創痍で戦っていたフロンターレ選手たち。
8月終盤の鹿島、鳥栖、湘南の3連戦は、どれもインテンシティ高い試合でかなり疲弊していたのが目に見えて分かりました。
しかし、鬼木監督は選手を信じてピッチに送り出しました。
中盤3人のかたちが整ったところで、自信を持って送り出したのは間違いないでしょう。
結果は2-1で手痛い敗戦。
スコア以上に、内容でも圧倒されてしまった90分でした。
ここまでの試合では、前半と後半で修正を加えてきた鬼木監督でしたが、この試合に限っては得意の修正力を発揮することはできませんでした。
マリノスが引き分けたことで優勝戦線脱落は避けられたものの、今後の対戦カードを考えると神奈川ダービーで負けたのは痛いな……。
最後まで諦めずに、サポーターも一丸になって戦おう!!
選手をターンオーバーさせていないとか、審判の判定とか……。
思うところはたくさんある試合でしたが、「バモフロ!!」らしく戦術的な面から敗因を探って振り返ってみたいと思います。
鬼木監督は意地を見せた感じですが、私には意固地になってしまったように見えてしまいました…。
今回は少々耳が痛い内容かもしれません!
それでは、ゆっくりと振り返ってみましょう!
まずは今節のスタメンです!
鹿島戦からほぼ同じメンバーで戦ったフロンターレ。
中盤3人を中心によく走った2試合だったので、湘南戦の今節は明らかに足が重そうでしたね。
後半に入って、シミッチ選手と橘田選手が完全に走り負けていました…。
攻守において劣勢だったので、セットプレイで取った1点を何とか守り切りたかった…。
1失点目はPK判定に泣かされましたが、2失点目は完全に攻略されました。
ただ、湘南の狙いも明確だったので、上手く修正したかったのも事実です。
対する湘南ですが、町野選手が怪我から復帰しましたね。
この復帰は湘南にとっては有難かったはず!
前線で起点にもなるし、よく走るし……。若くして代表に呼ばれる理由が分かります。
また、田中聡選手の移籍によってアンカーに茨田選手が入りましたが、うまくバランスがとれていた印象でしたね。
中盤のプレッシングも、きっちりタクトを振っていました!
そして、この試合も効いていましたタリク選手。
悩ましいところに顔を出してきて、前回対戦同様にフロンターレを困らせました。
今シーズンの2試合を観て、湘南は対フロンターレのバイブル・型を持っているなと感じました。
それくらい思い通りに試合を進めていましたし、再現性高く2試合を戦えていました。
どんなプランで臨んでいたのか!早速振り返ります!
プランA:深さを取ってバイタルエリアを狙う
攻撃の狙いは、前回同様に基本はサイド攻撃を展開していました。
そして、カウンターの時は前回対戦よりも縦にスピーディに展開していたのが印象的でした。
さらに、バイタルエリアでのボールの引き出しは今回も徹底して行っていましたね。
上の図は、前半6分50秒のシーンです。
谷口選手が中央への楔を入れましたが、ミスキックになり湘南がカウンターを仕掛けたシーンになります。
湘南は、奪ってからの前進がとにかく速い!
上の図で表しただけでも、カウンターでゴール前に5人の選手が入っています。
複数の選手がゴールめがけてフルスプリントしてきますので、フロンターレのDFはそれに合わせて下がらずを得ません。
そうすると空いてくるのが黒の丸で囲ったバイタルエリアです。町野選手や瀬川選手、平岡選手で引き下げたDFラインの前のスペースにほぼ必ずタリク選手が顔を出していました。
ボールを持っている時間が長くなかった湘南ですが、サイド攻撃を仕掛ける時にはこのスペースに必ず人を置き、スペースが空くのを強かに狙っていたのが特徴的でしたね。
前回対戦では、町野選手と大橋選手でゴール前深さを取り、中盤の米本選手、タリク選手がバイタルでボールを受ける動きを行ってきていました。
逆に言うと、フロンターレの守備はゴール前へ侵入されると中盤も含めてゴール前を固め、バイタルを空けてしまいがちであるとも言えます。
このフロンターレの守備の特徴を捉え、自チームの特徴と上手く掛け合わせた展開を作ることができていました。
プランB:バイタルエリアを消されたら、DFの背後を狙う
しかし鬼木監督をはじめ、フロンターレの選手もやられっぱなしではありません。
バイタルエリアを使われていることに全く気付かずにいないわけがありません。
当然、シチュエーションによってはきちっとケアをします。
その時の【プランB】がまた巧みでした。
フロンターレは、前半にバイタルを使われたり、アーリークロスを入れられたりとDF陣の前のスペースを上手く使われたという感覚があったはずです。
鬼木監督はよく「強気」という言葉を口にします。
引いて受ける守備よりは、前に仕掛けて奪いに行く守備を選手に促すのです。
そんな感覚があって迎えた後半、見事にそのプレスの裏をつかれたのが上の図のシーンです。
湘南のCB大野選手からサイドの中野選手へパスが出た時に、山根選手が即座に寄せに行きます。
プレッシャーを感じた中野選手は杉岡選手へバックパス。
その瞬間、山根選手のいたポジションが空いているので、中野選手が縦にランニングをしチャンスを演出したシーンになります。
手前のスペースを使われるから前に出たら、今度は後ろを使われる…。
DFとしては前と後ろどっちをケアしていいのかわからないので、とても対応がしづらいです。
このシーンは見えづらいですが、瀬川選手がジェジエウ選手を引き付けたり、山田選手も中野選手と同じ場所を狙っていたりと、湘南の選手はかなりハードワークをしていました。
チームとして決めた場所を全員で狙いに行く一体感を感じられるシーンが非常に多く観られました。
また、ご紹介した【プランA】と【プランB】を複合させた攻撃を行ったのが71分30秒の場面でした。
左サイドでフロンターレが上手く制限を掛けて、湘南が右サイドでやり直しをした場面ですが、
大外で受けた石原選手からボールを受けようとタリク選手が車屋選手の後ろのスペースへ走り込みます。
そこに橘田選手がついていきましたが、そうすると中盤バイタルのスペースが空くので、すかさず茨田選手が入り込みボールを受けます。
そこからフロンターレは後手後手の守備に…。
タリク選手と茨田選手とのワンツーで抜け出し、最期は中央の瀬川選手のシュート。
ゴールが決まらなかったのが不思議なくらいな決定機でした。
プレスを掛けたDFの裏を狙い、下がったDFの手前のスペースを利用して決定機を作る。
非常に理にかなった展開を意図的に作り上げていた湘南のサッカーでした。
素晴らしかったのは攻撃だけではありません。
守備も組織的で非常にソリットに守っていました。
湘南の守備のスタイルに対して、前回対戦も苦しんだフロンターレ。
鬼木監督は、選手交代を計りながら上手く対応したかったですが、上手く対応できず決定機を思うほど多く作ることはできませんでした。
まずは、湘南の守備のスタイルから確認していきます。
狙い続けた中央への縦パス
湘南は、5-3-2のブロックを敷いて守りました。
そして、前のタレントたちは〈3-2〉で中央のスペースを消しながら守っていました。
この守備のかたちは、まず2トップの瀬川選手と町野選手がシミッチ選手を挟んだ立ち位置を取ります。
CBがシミッチ選手にパスを出したくても、2人に挟まれてはパスが出しにくいので、自然と外にパスを出します。
上の図でいうと、谷口選手や車屋選手からでれば斜めに脇坂選手や橘田選手にパスが出せそうです。
しかし、湘南の中盤3人は2トップと離れすぎない立ち位置を取っているので、フロンターレの中盤3人にもきっちりマークがついています。
家長選手が、この試合も中盤まで下りてきてビルドアップに加わっていましたが、中央の赤い丸のスペースを5人で狭くしているので、家長選手にボールが入っても自由にプレイをさせてもらえませんでした。
中央にパスが出せないのであればサイドへパスを出すしかありません。
今絶好調のマルシーニョ選手に、右は山根選手が待っています。
しかし、サイドにパスが出た瞬間、最終ラインのウィングバックが猛スピードで寄せていき、さらに、中盤の選手もプレスに加わり、2人で囲ってボールを奪っていました。
この中央を狭くする形でボールを取られて、そのままカウンターを打たれてしまうシーンは、前回対戦も合わせると相当数喰らっています。
ボールを丁寧に繋ぐスタイルのフロンターレだからこそ、中盤のパスを受けられる場所を狭くするこの戦術は非常に有効でした。
対フロンターレ用の湘南のかたちだったかもしれません。
それでは、この湘南の守備に鬼木監督はどう対処したのか!
プランB(仮):CBからのロングフィード
まず、ハーフタイム明けの鬼木監督のコメントを確認してみましょう。
守備をコンパクトに!守る時は全員で!
怖がるな!ビルドアップで中央を狙える時は狙っていこう!
まずは追加点を取ろう!
攻めのかたちはあくまで中央からということですね。
自分たちのスタイルを貫くというメッセージでもあり、中央を狭くされても技術で突破できるという自信を持って、この言葉を掛けていると思います。
しかし、今日の湘南相手では「飛んで火にいる夏の虫」といったところでしょう。
家長選手がかなり低い位置まで降りてきてしまうので、センターサークル周辺に10人近く選手が密集している状況さえありました。
湘南の狙いがまんまとはまってしまう状況を、フロンターレ自ら作り出してしまったと言っても過言ではないでしょうし、適切なプランBが用意できなかったということでしょう。
それでは、どのようなプランBを用意するべきだったでしょうか?
短いパスが引っかかってしまうのであれば、ロングボールを織り交ぜていく必要があります。
短いパスをケアしに来た相手の中盤の上空へボールを飛ばすのです。
上の図でいうと、知念選手と家長選手はあくまで前線に立ち位置を取って、中盤が混雑しないようにします。
前線に構えていると、相手の最終ラインの選手が2人を見る格好にもなります。
その知念選手と家長選手がパスを引き出すために、前線から直線的に中盤へ降りていきます。
2人にマークがついていた相手DFが喰いついてくると、そのポジションががらりと空いてくるので、マルシーニョ選手が走り出し谷口キャプテンがロングボールを出すという展開が、プランBとして適切だったのかと思います。
このセンターバックからのロングボールという展開は、マリノス戦、鹿島戦、鳥栖戦では行うことができていました。
マリノス戦の先制ゴールはまさしく、左サイドで局面を狭くして、谷口選手から山根選手へのサイドチェンジ行ったことで、山根選手のスーパーアシストが生まれたわけです。
鹿島戦では、マルシーニョ選手へシンプルなロングボールが、カウンターの脅威を与えていました。
自分たちの得意な展開にならなくても、空いているスペースを見つけて強かに狙ってくるところが鬼木采配の特徴でもあると思うので、今節の湘南戦は「中央からのパスで攻める」ことに固執したのは少し意外でした。
もしかすると、湘南に苦手意識があるのは鬼木監督の方で、「自分たちのスタイルで勝たなければ!」という気持ちが強く出過ぎたのかもしれません。
世界的に見て、日本人はプランBを考えるのが下手だと言われています。
「初めから失敗することを考えるな!」、「最初から弱気でどうするんだ!」
こんなことを上司や部活動の顧問の先生に言われたことがある人も多いのではないでしょうか?
こう言われてしまうと、そもそもプランBを考える習慣がないですよね。
プランBはプランAがもしも上手くいかなかったときの大切な備えであるので、決してネガティブではないです。
鬼木監督は後半で戦術に少し変化加えたりするなど、プランBを持って試合臨んでいる監督であると私は思っています。
神奈川ダービーがそうさせたのかどうか分かりませんが、今節は上手くプランBが出せていなかったように感じましたね。
ここからの終盤戦は、【優勝を懸けた戦い】や【残留を懸けた戦い】というような戦術を超えた何かが作用してくる戦いになってきます。
だからこそ、監督という立場で冷静に戦局を見て、適切にプランBを打てるかというのはより重要になってきます。
自分たちのサッカーを貫きつつ、柔軟に戦ってほしいと思います!
優勝まで落として良い勝ち点なんてありませんよ!!
そして次の相手は少し厄介な……。
先週末のリーグ戦は、マリノスがFC東京に引き分けで勝ち点を落としました!
塚川選手ーー!!移籍してからもフロンターレの戦力となってくれてるんですかーーー!!(笑)
そして、清水に勝利したサンフレッチェ広島が暫定ですが首位に立ちました。
そのため、次節は首位との直接対決です!
ドイツ人監督であるミヒャエル・スキッペ監督のもと、ドイツらしいカウンタープレスを繰り出し、縦に素早く、全員でハードワークするサッカーを展開しています。
前節は退場者を出しながらも、川村選手の2ゴールで5連勝を絶好調です!
川村選手は、5連勝のスタートとなった鹿島戦でもゴールを決めており、今ノリに乗っていると言っても過言ではありません。
3-4-2-1のシステムで、基本的なスタイルは湘南と変わりませんが、湘南よりはボールを保持して攻める形を持っています。
中6日での戦いで、疲労が回復しきるのか。それともメンバーを変えて臨むのか。
優勝を取るためには、この直接対決は勝利を収めたいところです!
ホームでの勝率は良いので、次節も全力で応援したいと思います!
それでは、勝ちを祈って!また次節お会いしましょう!
Vamos!Frontale!!