圧倒的なスタッツも一点差の辛勝
日本時間4月30日18時キックオフ
広州恒大との最終節、右サイドからの崩しで知念選手が決めた1点を守り切り最終節を勝利で終えました。
広州恒大はコロナ感染対策として、リザーブチームを中心とした編成で今大会に乗り込みました。
未だ勝利も得点もない広州恒大でしたが、何とか勝利を、勝ち点をという執念を感じる試合でした。
防戦一方ながらも最後の最後で失点を防ぐなど随所に気迫を感じるプレイを見せてくれました。
一方フロンターレは、シュート23本、パス799本、ボール支配率81%、パス成功率86%とフロンターレが圧倒したスタッツを残しました。
守備で危ない場面はなかったものの、攻撃の最後の一押し、一アクセントに課題が残った展開になりました。
内容は5-0 しかし結果は1-0
なぜ点を取り切れなかったのか、なにが足りなかったのか。
そんなところを紐解いていくと、今後のリーグ戦、はたまた来年のACLの戦いに繋がるヒントが隠されているかもしれませんね!!
今回は、そんなところに注目しながら試合を振り返っていきたいと思います。
ブロックを敷いた広州と崩しに掛かったフロンターレ
サイドバックは中盤が本職の二人を配置
フロンターレはいつも通り4-3-3の布陣。
サイドバックを松井選手、瀬古選手と普段中盤の選手が務めます。
今大会、相手のDFラインの裏を意識しているフロンターレとしては、後ろから球出しのできる選手がいることで攻撃に幅が出ることに期待できます!!
広州は、現地CGではこの並びでしたが、Zhou選手(50)が最終ラインに入って、Sader選手(68)が一列上がった並びでした。
広州としては失点をしないように、自陣ゴール前に完全にブロックを敷いた守備陣形。
そして、スピードのある前線に預けてカウンターに転じる展開にもっていきたかったか。
試合は前半13分、右サイド瀬古選手からの配球を、小林選手がフリックした見事な展開から知念選手が得点を決めています。
他にも良いシーンを何度か作ったものの、結果として、この1点を守り抜いての勝利となりました。
ゴール前までフロンターレが侵入するも、崩し切るまでには至らなかったとも言える試合展開になりましたかね。
何か違う展開にできたヒントはあったのか。
いくつかシーンをピックアップして探っていきましょう!!
大会を通して狙い続けたDF背後のスペース
この大会を通じて、フロンターレはDFラインの裏を狙う攻撃をやり続けたように感じます。
ジョホール戦の5得点も、特に右サイドでしたが長短のパスを織り交ぜて裏を狙い続けた賜物であったと思います。
この日も広州に5-4のブロックを敷かれていても、狙っていることが分かるランニング、パスが多く見られました。
試合開始直後に宮城選手の良いドリブルがありましたよね!
ここでは、前半8分のシーンをピックアップします!
序盤から相手陣内に押し込んでの展開が続いていました。
このシーンも、小塚選手をセンターに置き左右に展開を繰り返しながら押し込んでいました。
左右の往復がいくつかあった後、右の瀬古選手がボールを受けたところで知念選手にくさびを入れたところです。
この時、知念選手が引いてうけた裏のスペース(丸で囲ったスペース)を遠野選手が良いランニングで狙いました。
残念ながら、知念選手から小林選手へのパスがずれたので攻撃は終わってしまいましたが、もし小林選手に繋がった場合、ポケットを取った遠野選手にボールが渡っていれば決定機演出と繋がっていたわけです。
個人の止める、蹴るの技術が物をいったと言えばそれまでですが、狙っている場所、描いている絵は良いものでした。
中盤が脇坂選手に変わった後半は、脇坂選手が起点となって裏のスペースを取りに行っていました。
脇坂選手の場合、バイタルで人を引きつけて裏に走った知念選手、小林選手に出した決定機が一度ありました。(後半74分)
この試合多かったサイドから斜めのクロス
実はこの試合、かなり多かった展開はサイドからの斜めのクロスです。
【ウィングがサイドで深さを取りDFラインを下げさせる➔サポートに行ったサイドバックへボールを下げてクロス】
この形を左右問わず90分を通して行っていました。
おそらく、真ん中で引かれたDFラインを崩すためのアイディアとして、この試合試したのではないかと思います。
結果的にこの形でのゴールを決められませんでしたが、今後の戦い方のバリエーションは増やせたように感じました。
このシーンは前半33分、全体を押し込んでからの展開です。
全体でブロックを引いて構えられると、当然中央にスペースは無く、山村選手から真ん中(上図だと知念選手)に直接ボールを入れても、ゴールを脅かすような効果的なパスにはなりにくい。
むしろ、相手DFは前向きにプレッシャーを掛けられるので、守りやすい、カットしやすいパスになってしまいます。
ここで山村選手が選んだのは、大外の宮城選手でした。
幅を取っていた宮城選手へロングフィードのパスを出し、宮城選手は小塚選手に戻して展開しています。
ボールがサイドに展開されると、中のDFはボールの行方を追うので目線がボール方向へ変わります。
正面に向いていた目線がサイドに流れるので、中央の選手を一度視界から外す格好になってしまいます。
その状態で、小塚選手が中へ斜めのボールが入ると、DFは目線が振られているので反応が遅れてしまうのです。
このシーンは、残念ながら遠野選手の足元にボールが収まりませんでしたが、DFは完全に後手の対応になっていました。
高いボールで知念選手の頭に合わせても面白かったかもしれませんね。
ウィングのサイドで深さを取るのは左サイドが多かった印象でした。小塚選手ではなく松井選手へ落としている場面もありましたね。
この動きを繰り返すからこそ空くスペースというのも出てきます。
縦のランニングを囮にする
直後の36分です。
キーパーからのボールの競り合いを制し、全体がばらけた中でのサイドの展開を作りました。
この場面、松井選手が右サイドにボールをドリブルで運び宮城選手にボールを預けた後、そのまま縦にスプリントしていきました。
ここまでのフロンターレは繰り返しDFラインの背後、サイドでの深い位置を取ってきていましたので、広州のDFはそこを消すために松井選手に付いていきます。
割と全体が間延びしていたので、なおさら背後スペースを意識していきます。
これを、宮城選手は冷静に逆手に取りました。
松井選手にDFを引きつけてもらい、実際に選択したのは中の知念選手。
サイドに意識がありますから、フリーの状態でセンタリングが上げられ、中の知念選手もCBの間でフリーでヘディングが出来た場面でした。
ここも、知念選手のヘディングのクオリティとZhou選手(50)が粘り強く付いてきたのが相まって得点には至りませんでした。
シュート自体も知念選手が頭を振って狙いにいった分、Zhou選手に当たってしまった感じになりましたね。
この2シーンのような展開を意図的に作ってきていたので、蔚山のような組織的に構えてくる相手に対する崩し方をデザインしてきた可能性は高いです。
ただ、最後のシュートの質はもう一つといった印象でしょうか。
ゴールへの気迫と嗅覚
このように良いシーンは作れている。ただし、「良いシーンだね」で終わっている…。
点が入っていない。
最後のフィニッシュワークも技術なので、選手のクオリティが低いと言われてしまうとそれまでだが…。
しかし、「ここぞ!」という時のゴール前での気迫や「そこにいたのか!?」と思わせるような嗅覚がもう少しあってもよいのではないかと私は思ったりするのです。
そんなシーンを取り上げてみます。
こちらは前半27分のシーンです。
広州のクリアを自陣で拾い、ものすごくシンプルな形でゴール前まで行ったシーンです。
【山村選手からハーフラインにいた小塚選手へ➔ハーフスペースにいた橘田選手へ➔縦に走った宮城選手へ】
と非常にシンプルな縦パス3本で相手のポケットを取ることができたのです。
あとは中に折り返して、FWが触ってくれれば1点……となるはずなんですが。
中央構えていた遠野選手と知念選手がゴール前まで入り切れずに、先にボールが到達してしまったのです。
なので、ゴール前のスペース(丸で囲ったスペース)を先にDFに入られてしまい、クロスに合わせられるポジションを誰も取れないかたちになってしまいました。
本来、橘田選手が宮城選手にパスを出した時点で、「ここだ!」とゴール前にフルスプリントで入っていかないといけないシチュエーションなはずです。
せっかくポケットを取ったわけなので、「中へ折り返しがあれば点が入るぞ」という嗅覚をFWは特に働かせて欲しい。
「点が入るぞ!」という迫力でゴール前に入れば、DFは間違いなくゴール前を閉めに行きますので、その後ろのマイナスのスペースが空くこともあるでしょう。
そこに味方が入ることで、いわゆる「攻撃に厚みが出る」状況ができるわけです。
この場面でいうと外にいた小林選手ですが、中の知念選手がゴール前に入り切れていないので、結局どっちつかずのポジション取りをするしかなくなってしまっています。
動いてるボールの位置から、瞬時にスペースを見つけて走り込む。単純ですが難しい。
ボールが入ってこないこともあるかもしれない。しかし、走り続けることで与えらる相手へのプレッシャー、空いてくるスペースというのが90分戦った時には重要になってくるのです。
43分にも同じような攻撃の形がありました。
外からの攻撃が完結できなかったので、後ろにボールを下げたところで、松井選手の走り出しに反応して浮き球でポケットへ。
松井選手はヘディングで何とか中へ折り返しましたが、中で反応している選手は一人もいなかったのです。
ニアにいたのは遠野選手でしたが、スペースにいたのは広州の選手でしたし、ファーの知念選手も中へ絞る動きはありませんでした。
二人の雰囲気は、「ダイレクトで折り返しが来ないであろう」と思っていたように見えてしまいます。
DFラインの裏をつけても、中央の選手が連動して入っていなければ、なかなか得点は生まれないでしょう。
せっかくのカウンターも……。
カウンターでも同じことが言えます。
カウンターが始まった瞬間に、何人の選手がゴールに向かって走ることができるのかによって、カウンターの質は変わってきます。
上図は前半の21分です。
フロンターレの左コーナー付近までボールを下げさせられますが、塚川選手、小塚選手の連携で広州のブロックを抜け出し、遠野選手にパスが入ったところからカウンターが始まります。
ここまでは、広州の引かれた守備を崩さないといけない状況が続いていました。
しかし、21分は初めて相手守備ブロックがばらけた状況での攻撃になったので、スペースがかなり空いているうちに攻撃を完結させたかったですね。
遠野選手が相手陣内に侵入した時、フロンターレ4人に対し広州は5人でした。
この時の遠野選手の判断としては、「枚数が相手の方が多いから、後ろからの攻め上がりも待ちながら前進しよう」というものだったかもしれません。
それも判断の一つです。
しかし、5バックの一枚が遠野選手にチェックに行き、4-1のDFラインになった状況でしたから、知念選手のシュートスペースも充分に確保出来たのではないかとも思います。
この時は、少し持ち上がってからサイドの小林選手に預けましたが、もっと早いうちに預けるのも面白い選択だったでしょう。
小林選手の個人技でサイドを突破させてもいいでしょうし、遠野選手と大きなワンツーでゴール前に迫ることも出来たでしょう。
さらに言うならば、瀬古選手の攻め上がりももう少し早ければ遠野選手、小林選手の選択肢は広がったと思います。
引いたブロックがなかなか崩せていなかったからこそ、カウンター局面でスペースがある時がビックチャンスになるのです。
まさに「ここだ!」というスイッチが入れられるかどうかのポイントですね。
形に拘るのか、素早い攻め上がりを使うのか
後半の62分と79分にショートカウンターで、瞬間的に縦に抜けた決定機を作り出していました。
ただ、ロングカウンターやキーパーから相手のプレスを剥がしてからの攻撃になると、相手守備をひっくり返した素早い攻めよりは、自分たちの攻撃の形を作るために遅攻を行う傾向があると感じています。
長い距離を剥がした時も、相手ゴール前はスペースが空いていることが多いですから、後ろから人を押し上げて迫力ある攻めを展開する方が決定機は多く作れると思います。
広州はリザーブチーム中心のメンバー構成だったので、守備ブロックを引かれても隙はありました。
しかし、蔚山戦のように組織的にかなり整えられた守備が相手だと、同じように数多くの決定機を作るのは難しいです。
スペースが開けた一瞬の隙を見逃さず、どれだけの選手が反応してスイッチを入れられるかが少ないチャンスをものにするためには必要です。
ボール保持のスタイルで国内を席巻しているフロンターレですが、攻撃のかたちにこだわり過ぎない形(縦のカウンター・スピード)も習得していくと、国内では敵なし、アジアでは上位を狙える。そんなチームになれると思います。
鬼木監督は、今回のACLでDFラインの裏を狙い続けたのも、その一端を見せてくれたのではないでしょうか。
アジア用の戦いに収めず、国内でも同じような意識が見られるのか。
今後のリーグ戦で注目して観ても面白いかもしれませんね!
ACL敗退とはいえ、シーズンはまだ序盤!
一年終わった時にどんなフロンターレになっているのか楽しみです!
熱い声援を送りながら見守っていきましょう。
Vamos!フロンターレ!!
次節エスパルス戦は勝ちましょう!!