【J1】第23節vs浦和レッズ~Frontale Pride 鬼木監督の意地~ (2022/7/30)

 

またもや猛威を振るい始めたコロナウイルス。

感染拡大防止と称して、一部自治体では行動制限を促すなど、未だ出口が見えてきません。

この余波はJリーグにも訪れ、前節は名古屋のメンバーが揃わないということで延期になりました。

しかし、この延期が物議をかもしています。

 

今節前、代表へ3人の選手を送り込んでいるフロンターレに、コロナ陽性者が続出しました。

ベンチ入りは5人、内キーパーが3人と非常に苦しい状況になってしまいました。

リーグ規定では、13人の選手登録が可能であれば試合は開催されるとのことなので、この苦しい状況が生まれてしまいました…。

 

しかし前節の名古屋戦…報道に出ている情報によると保健所の指導の誤認による延期となってしまい、実は登録可能選手13人を用意できたのではないかと話題になっています。

これにフロンターレ関係者、特にサポーターの間で怒り心頭。

試合ができたはずなのに延期した名古屋とギリギリの状態で開催を決行したフロンターレでの不平等さが、リーグ、名古屋への不信感となっています。

 

鳥栖戦に続いての、アウェイの試合の延期に、旅費をドブに流した方も多かったはず…。

旅行と変えて楽しんだ人もいたとはいえ、一定の我慢を強いられたサポーターからすれば許しがたい事態です。

 

 

そんな前段が試合前にありながら、鬼木監督はキーパーを3人全員ベンチ入りさせるといういわば強硬策で試合の延期を阻みました。

指揮官の言葉、表情からは意地の試合と言うに他なりません。

苦しい状況で戦い抜いた選手の姿に、フロンターレサポーターであることの誇りを確認できた一夜となったのではないでしょうか。

 

 

結果、内容ともに上回った浦和

 

まずは、本日のスターティングメンバーです!

 

両SBが本職ではない苦しい状況に

 

冒頭でも述べたように、コロナ陽性者の影響で選べるメンバーがそもそも限られています。

特に影響が出たのがサイドバックです。

両者とも中盤が本職の選手ですが、よく奮闘していました。

しかし、守備の所で踏ん張ることができなかったのは仕方ない反面、悔しい結果となりました。

 

ゆう
ゆう

限られた選択肢の中で良く戦ったけど、踏ん張り切れなかったね…。

 

対する浦和も、ショルツ選手を怪我で欠いているものの、絶好調の松尾選手を中心とした攻撃で6,7月を無敗で駆け抜けています。

調子の良さはこの試合は健在でしたね。

 

それでは、試合を振り返ってみましょう!

 

怪我の功名【瀬古樹】

 

限られた選択肢の中で、戦術に工夫が見られた今日の鬼木采配。

特に特徴的だったのはビルドアップの形です。

サイドバックが本職の山根選手や佐々木選手は、ライン際に張って前にいるウィングとの連携、オーバーラップなどを中心に攻撃参加します。

 

しかし、今日のサイドバックは瀬古選手と橘田選手と中盤が本職の選手でした。

その中で行われたビルドアップの形はこちらです。

 

 シミッチ選手とSBの3人でビルドアップの形を形成

 

 

センターバック2枚を残し、シミッチ選手、瀬古選手、橘田選手の3選手で相手の2トップの陰にならない位置でビルドアップに参加します。

フォーメーションでいうと2-3-5のような形ですね。

マンチェスター・シティやバイエルン・ミュンヘンほどではないにしても、偽サイドバックのような立ち位置を取っていました。

本職が中盤だからこそ、ボールが持てる、パス出しができるという特徴を活かした戦術ですね!

 

ゆう
ゆう

個人でのドリブルやランニングが少ない分、パスで試合を組み立てることができるわけだね!

 

浦和も前線から強度の高いプレスを行っていたので、序盤は前になかなかボールが進まない印象を受けました。

特に前線にいた松尾選手と江坂選手は、シミッチ選手へのパスコースを消しながらセンターバックにプレッシャーを掛けていたので、フロンターレのビルドアップも窮屈に行っていました。

 

そういった中で、中盤らしい振舞いで貢献してくれたのが瀬古選手でした。

家長選手との連携はまだぎこちなさがあるものの、少し前めのポジションから外へ中へかなり良いパスを供給してくれました!

先日のPSG戦でも非凡なパスセンスを披露した25歳の若武者は、非常事態で得たチャンスを活かすことに成功したと言えるでしょう。

現状タレントの多い中盤ではありますが、今後の活躍に注目したい選手の一人ですね!

 

 

ほろ苦い復帰戦【ジェジエウ】

 

瀬古選手と対照的な結果となったのがジェジエウ選手でした。

怪我明け最初のリーグ戦は3失点とほろ苦い結果に…。

ジェジエウ選手が出場の試合での3失点は、2019年8月の名古屋戦まで遡るとのこと。

無理をさせずにゆっくりと復帰までの道を整えていましたが、実戦の数をこなせていないので、マッチフィットネスが整うまではもう少し時間が必要です。

 

 

シミッチ選手の脇を使われ、浦和攻撃陣に翻弄されたジェジエウ選手

 

マッチフィットネスが整うとはどういうことか。

それは、試合でのスピード感、プレイ強度に体が慣れるだけでなく、周りの選手との連携や距離感、呼吸を合わせられることも含みます。

 

今節の浦和は、上の図のようにシミッチ選手の脇のスペースを上手に使っていました。

この時に、ジェジエウ選手が自分で付いていって対応するのか、シミッチ選手へのコーチングでパスコースをケアしてもらうのかという連携が大切になってきます。

前半16分の失点シーンも、このような細かいズレが生んだものといえます。

 

松尾選手のポストプレイからの飛び出しに対して、マークの受け渡しが中途半端に

 

前半16分、得点が生まれるきっかけとなった松尾選手のポストプレイからのシーンです。

センターバックの岩波選手からシミッチ選手の脇に顔を出した松尾選手にパスが入り、サイドに展開。

そのまま松尾選手は縦にランニングをします。

 

最初はシミッチ選手が並行して走っていましたが、瀬古選手とラインが揃ったところで、シミッチ選手はジェジエウ選手にマークを引き渡すようなかたちで止まりました。

しかしジェジエウ選手は、瀬古選手の背後にランニングした江坂選手をケアしつつポジショニングを取っていたので、松尾選手をカバーできる立ち位置を取れていませんでした。

結果、関根選手とのワンツーで抜けた松尾選手がゴールを決め、序盤で非常に厳しい展開にされてしまいました。

 

シミッチ選手がそのまま並走するのが一番リスクが少なかったように思えますが、ジェジエウ選手が外の江坂選手を捨てて中央をケアするという立ち位置を取っても良かったはずです。

この辺りはお互いの呼吸であり連携の部分なので、復帰初戦だから起きた綻びと言えます。

試合数が重なってくれば解消されてくるでしょう。

 

ただ、守備の重要なピースが戻ってきたことに変わりはありません。

この試合でも、ヘディングの強さや背後のスペースでの走り合い、スピード勝負などで「さすがジェジエウ!」というシーンがいくつもありました。

前十字靭帯の怪我なので、決して無理はせず、少しずつ強度を上げて試合にフィットさせてほしいと思います!

 

 

鬼木監督の意地

 

今節は3-1と結果・内容ともに浦和に上回られ敗北となりました。

マリノスとの勝ち点差は開き、3連覇を目指すチームとしては厳しい展開となってしまいました。

 

コロナの影響をダイレクトに受けた今節、試合内容とは別にチームとしての姿勢に感動を覚えたサポーターは多かったはずです。

人数が少ない中でも戦い、勝利を目指し続けたのは「さすがプロ!」と唸りました!

 

ゴールキーパー登録の選手が、フィールドプレイヤーのユニフォームを着て、ピッチの選手に声を掛け続けていたのも印象的でした!

本職とは異なるところで準備していましたが、【今置かれた状況で自分にできること、チームに貢献出来ること】を考え抜いた結果の行動だったと思います。

 

このようなピンチだからこそ、チームの団結を垣間見たフロンターレ。

そんな指揮官、鬼木監督の言葉からも【Frontale Pride】なるものを感じ取ることができました。

 

 

試合前インタビューで見せた笑み

 

試合前はあまり多くを語らない鬼木監督。

しかし、コロナ陽性者続出の異常事態に、インタビュアーの日比野さんも当然質問をぶつけます。

 

まず口にしたのは、この状況下でも【勝ち】を普段と変わらずに求めたこと。

こんな状況である前に、「我々は強いフロンターレなのだ」というプライドを感じさせました。

 

鬼木監督
鬼木監督

ルールの下で準備しないといけないので大変ですが、2試合延期で飛ばしているのでこの試合を成立させるために動いてきた。

(ベンチに)フィールドプレイヤーが2人しかいない状況ですが、チーム一丸となって戦いたい。

総力戦になりますが、序盤からどれほどいけるか、それを踏まえて体力的なところは難しい状況になるので、選手と我々で共有して戦えるか、自分たち次第です。

 

リーグが決めたルールの中で、これ以上の延期試合を出さないために必死に準備をしてきたことが伺えます。

 

さらに、ゲームプランに関する質問への応答途中、「フィールドプレイヤーが2人しかいない状況ですが……」のところで笑みが出るのです。

「こんな異常事態、後にも先にも無いですよ…。」という苦笑いである可能性が高い一方、

そんな状況でも自分たちのやること、準備は変わらず出来ますという余裕が少なからずあったのではないでしょうか。

 

どんな状況でも、心に余裕がない人に笑顔は出ません。

「むしろ楽しもうじゃないか!」と選手に話していてもおかしくはないなと、試合前インタビューを見て感じました。

 

 

当事者として示した問題提起

 

試合を終え、鬼木監督は様々な感情が渦巻いたでしょう。

試合終了直後のインタビューでは、険しさを見せると同時に、「自分の力不足」「自分が勝たせたかった」という言葉を出しました。

コロナという外部環境に影響された部分が大きい中、自分の責任だとはっきり言葉にした指揮官はさすがだなと思いました。

 

そして、様々な媒体に今節のことを話されていますが、「勝って話せればよかったですが…」と前置きをしつつ、今回の一連の試合開催について意見をしていました。

 

鬼木監督
鬼木監督

自分達がこのような状況になり、GKを多く入れたりした中で、そんな簡単に13人揃わないのかな?という疑問もある。

意図的、意図的じゃないにしても、今日の試合は「問題提起の試合」になるかもしれない。

ただ、目的は勝つことなのでこういった状況でも勝つことを選手には求めていく。

 

名古屋と抱えている選手数や、拠点の自治体のルールの違いなどがあるにせよ、不平等感があったのは間違いありません。

コロナ関係で起こった罰則や処置に関することで、このような感情を抱いているサポーターは多いはずです。

「これがダメなら、あそこのチームのあれもダメでしょう!」

「あれが許されて、なぜこれはダメなんだ!」

そういった全てのことへの問題提起として、リーグ全体がどのように掛け合うのか。

今後の動向に注目が集まることでしょう。

 

そしてフロンターレとしては、当事者になって改めて分かったこと。

試合を延期された側に立ったからこそ、試合を延期にしないぞという意地。

決して美談にせずに、あくまで勝ちにこだわること。

これら全ての言葉が鬼木監督らしさであり、作り上げてきたフロンターレらしさが凝縮されているのではないでしょうか。

 

名古屋戦の延期が、リーグ全体に今後どのような波紋を広げるか分かりませんが、今節のフロンターレの姿勢に胸打たれたサポーターが火付け役となり良い方向へ変わっていくことを願うばかりです。

就任から6年で4回のリーグ優勝を成し遂げ、フロンターレの黄金期を築き上げている鬼木監督。

その指揮官の言葉には、クラブとしてのプライド、意地を垣間見ることができました。

 

 

次節、首位を迎える【シックスポインター】

 

平日のルヴァンカップも含めて開催が危ぶまれているのが残念ですが…。

フロンターレとしては今シーズン一番の正念場と言えるかもしれません!

 

ホームに迎えるは首位の横浜F・マリノス。

今、Jリーグで最も勝つのが難しい相手ではないでしょうか。

とにかく穴が無い。攻撃力が抜群。

 

ベストメンバーがなかなか揃わないフロンターレの現状を踏まえるとかなり厳しい戦いが予想されます。

しかしそんなことは言ってられません。

フロンターレの意地、プライドに掛けて勝たなければならないのです!

 

3連覇への大事な一戦!

現地で応援したかったけれど、次節もDAZNかな…。

けれど心は等々力に!みんなで応援しましょう!!

 

Vamos!Frontale!!

 

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